• TOP
  • お知らせ
  • クラブニュース
  • インカレ12連覇を置き土産 ハンドボール部女子を退任する楠本監督に聞く 「毎年異なる指導の積み重ねが連覇に」

NEWSお知らせ

クラブニュース

2025.12.23

インカレ12連覇を置き土産 ハンドボール部女子を退任する楠本監督に聞く 「毎年異なる指導の積み重ねが連覇に」

 全日本インカレで前人未到の12連覇を成し遂げ、女子日本代表「おりひめJAPAN」の監督も務めた名伯楽、大阪体育大学ハンドボール部女子の楠本繁生監督(61)の退任が決まりました。
楠本繁生監督【大阪体育大学】
 来年1月末に大阪体育大学を退職し、国内最高峰のハンドボールリーグであるリーグH?ブルーサクヤ鹿児島の監督に就任します。また、大阪体育大学ハンドボール部女子でアドバイザーを務めます。
 なぜ退任するのか、次期監督の?本遼(よしもと?はるか)コーチに期待することは。楠本監督に聞きました。

「連覇、日本代表 高い経験値を次の舞台へ」


楠本繁生監督【大阪体育大学】
――大体大の監督を退く。今の思いは
 高校教員を23年務めた後で大学に来て、高校とは違う、よりレベルの高いフィールドに立ち、いい選手と出会い、いろんな支援や協力を受けて12連覇、日本代表監督など高い経験値を積めた。この経験を次の舞台で活かしていけるよう精進したい。
――退任を決意した理由は
 大学の定年まであと5年ほどで、年齢的に複数のチームから声をかけてもらうのは今しかないし、自分としても変わるチャンスだった。若い指導者が前向きな姿勢でチャレンジしたいと言ってくれていることも考え、思い切ってバトンタッチしようと思った。

「31歳で全国V4回はまれ 熱量ある若い指導者にバトンを託す」


?本遼コーチ【大阪体育大学】

?本遼コーチ


――前向きな姿勢とは
 吉本コーチは4月から僕に付いてコーチを務めたが、ある日、「いずれ自分は辞める。後のこととか考えているのか」と聞いた。彼から「やりたい。真剣です」と答えをもらい、強い意思を持っていることを確認した。若い指導者の熱量と経験が、いい選手と重ね合った時に大きな力を発揮すると思う。
――吉本コーチの指導者としての特徴は
 大学を卒業してすぐに中学で指導者になり、全国制覇4回。31歳の若さでなかなか達成できない。ハンドボールに対しては理論派だ。また、ぼくは選手起用で我慢できずにすぐに選手を変えるが、吉本コーチは忍耐力というか耐える力を持っている。辛抱強く選手を変えずに使い続けるタイプだ。

「リーグHでは競技の楽しさを伝える」


楠本繁生監督【大阪体育大学】
――ブルーサクヤ鹿児島での抱負は
 もちろんリーグHでやるからには日本一を目指すが、選手が同じ意識でいるかどうかが一番大事。選手がその気持ちをもっていないと、指導者との間にボタンの掛け違いが出る。まずは選手に歩み寄って、選手の気持ちに応えるような指導をしたい。また、高いレベルを目指す一方で、ハンドボールの原点を忘れず競技の楽しさを伝え、ハンドボールを広め、深める指導をしていけたらと思う。
――12連覇を振り返ると
 大学の16年間で15年、インカレ決勝のベンチに座り、13勝2敗。大学チームに負けたのは5回だけだ。新型コロナでインカレが中止になった2020年は、相澤菜月、中山佳穂(ともに現ドイツ?ブンデスリーガ)がいて体大が一番強かった年だった。学生スポーツは毎年メンバーが変わり、前年と同じやり方をしたことは一度もない。選手の状況や力をどう組み合わせて大きなマルにするか、1年間考えてチームづくりをしてきた。やりごたえのある仕事を1年1年してきたと思う。その積み重ねが今1、2連覇と言う言葉になっているのかなと感じている。
――日本代表監督も務めた
 僕自身初めての経験で、みなさんの協力を得て2年半務めたが、パリ五輪アジア予選は最後に1点差で五輪に行けず(最終戦で韓国に24‐25)、あの試合の結末は死ぬまで頭の片隅から消えることはない。「あの1点があるから今の自分がある」と何年か後に言えるように精進したい。

「学生はハンドボールを通じて社会に貢献できる人材に」


楠本繁生監督【大阪体育大学】
――ハンドボール部の学生に贈る言葉を
 ハンドボールを通して将来、社会に貢献できる人材を育てたいと思ってやってきた。部員の皆さんはハンドボールを通して人間性を高め、自分と向き合って学生生活を頑張り、自分の目標に自分自身が到達できているかどうか、自分自身の振り返りができる人になってほしい。
――吉本次期監督へのメッセージを
 周りからいろいろ言われると思う。聞く耳は持たないといけないが、自分がぶれないようにして、自分がやるべきことは何かしっかり柱を持ってほしい。
楠本繁生監督【大阪体育大学】
楠本繁生(くすもと?しげお)
1964年10月10日生まれ。スポーツ科学部教授(体育科教育学)。大阪体育大学で選手としてインカレ優勝。京都府立洛北高校での在任23年間にインターハイで7回優勝した。2010年、大体大の監督に就任し、同年インカレ準優勝。翌2011年初優勝し、2012年準優勝。2013年から12連覇(コロナ禍による2020年の中止をはさむ)を達成した。2021年秋から女子日本代表「おりひめJAPAN」監督を兼任。2024年4月のパリオリンピック世界最終予選まで指揮を執った。同予選では、代表選手20名のうち大体大は現役学生2名、卒業生13名が参加した。今月26日開幕の世界選手権でも、代表18人中11人が教え子。

▲